鍼灸院の事業承継やM&Aを検討する経営者向けに、売却相場から具体的な手順、特有のリスク、2025年最新の補助金情報まで網羅的に解説する専門情報サイトです。

鍼灸院の売却価格の決まり方(計算式)

鍼灸院の売却相場と企業価値の計算方法


鍼灸院の売却価格は、一般的に「時価純資産+営業利益の1〜3年分(のれん代)」をベースに算出されます。自由診療の比率や集客力、スタッフの定着状況によって、この金額は上下します。


計算の考え方を分解すると、次の2つの要素から成り立っています。


  • 時価純資産:資産(現金・設備・内装など)を時価で評価し、負債を差し引いた純粋な財産価値
  • のれん代(営業権):純資産額を上回る価値。ブランド力・患者基盤・立地・収益力といった無形の価値を、営業利益の数年分として上乗せする
このうちのれん代は、純資産を超えて支払われる「将来の稼ぐ力」への対価です。営業利益の何年分が乗るかは、収益の安定性や再現性によって変わり、案件によっては2〜5年分で評価されることもあります。BATONZなどのプラットフォームでも、この「純資産+利益の数年分」という考え方が基本とされています。

イメージしやすいように、簡易的な計算例を示します(あくまで考え方を理解するためのモデルであり、実際の価格を保証するものではありません)。


項目A院(自由診療中心・仕組み化済み)B院(保険中心・院長依存)
時価純資産500万円500万円
年間営業利益600万円400万円
のれん代の年数評価営業利益の3年分営業利益の1年分
のれん代1,800万円400万円
譲渡価格の目安約2,300万円約900万円
同じ純資産でも、収益の質と再現性によって譲渡価格の目安が大きく変わることがわかります。「院長個人の腕」に依存した収益よりも、「仕組みで生み出される収益」のほうが高く評価されやすいのがポイントです。

具体的な売却相場や、少しでも高く譲渡するためのコツを知りたい場合は、自院の決算書をもとにM&A仲介会社などへ簡易評価を依頼してみるとよいでしょう。


鍼灸院の譲渡価格を高める評価アップの3つのポイント


鍼灸院の譲渡価格を高めるカギは、「院長個人への依存(属人性)を減らし、収益を仕組み化すること」です。特に効果が大きいのが、①自由診療比率の向上、②Web集客の仕組み化、③脱・担当制の3つです。


買い手が最も警戒するのは、「院長が抜けたら売上が消えるのではないか」という属人性のリスクです。逆に言えば、属人性を下げる取り組みは、そのまま評価アップにつながります。


評価を上げる要因評価を下げる要因
美容鍼・自費整体など自由診療の比率が高い保険診療への依存度が高い
Web集客・予約・リピートが仕組み化されている集客が院長の人脈や口コミ頼み
脱・担当制で誰でも一定品質の施術ができる特定の施術者(院長)に患者がつきすぎている
直近の業績が安定・成長傾向売上が特定の大口患者に偏っている

ポイント1:自由診療(自費)の比率を高める


保険診療は制度改定や審査の影響を受けやすく、収益が不安定になりがちです。美容鍼や自費の整体メニューなど、自由診療の比率が高い鍼灸院は、収益の自律性が高いとみなされ評価が上がりやすくなります。fundbookなどの支援会社も、自費比率の高さを評価ポイントとして挙げています。


ポイント2:Web集客を仕組み化する


ホームページ、Googleビジネスプロフィール、SNS、Web予約などを通じて「院長の個人的なつながりに頼らず患者が集まる状態」をつくると、買い手は集客の再現性を高く評価します。新規患者の流入経路が記録・分析されていることも、引き継ぎやすさの証明になります。


ポイント3:脱・担当制を進める


「この患者は院長でないと診られない」という状態は、承継後の患者離れに直結します。施術手順のマニュアル化、複数施術者でのローテーション、引き継ぎ記録の整備などで「脱・担当制」を進めておくと、院長交代後も患者が残りやすく、評価も安定します(TRANBI等でも対策として推奨されています)。


ただし、高く売るためには評価を上げるだけでなく、買い手が警戒するリスクを事前に取り除くことも不可欠です。リスク面については後述の章で詳しく解説します。


院長1人で運営する小規模鍼灸院(1人治療院)の事業承継


院長1人で運営する小規模な鍼灸院(1人治療院)でも、事業承継は十分に可能です。ただし、収益が院長個人の腕に大きく依存しているため、「居抜き価値」「カルテ・顧客資産」「立地」を軸に、現実的な引き継ぎを設計することが成功のカギになります。


1人治療院は、収益のほとんどが院長の施術技術と人柄に紐づいているため、のれん代(営業権)が付きにくいという構造的なハンデがあります。一方で、設備が整った居抜き物件として、また固定客のついた立地として、買い手にとって魅力的なケースは少なくありません。


1人治療院ならではのハードルと、現実的な対策を整理します。


  • ハードル1:属人性が極めて高い → 施術手順や問診の流れをマニュアル化し、「院長でなくても再現できる部分」を可視化する
  • ハードル2:患者が院長個人につきすぎている → 引き継ぎ期間を設け、院長が一定期間は技術指導・顧問として関与し、患者の信頼を後継者へ移す
  • ハードル3:財務情報が整っていない → 直近2〜3期分の数字を整理し、自費・保険の内訳や患者数を「見える化」する
  • ハードル4:相手が見つかりにくい → 同業の独立希望者や、エリア拡大を狙うグループ、M&Aプラットフォームの活用で接点を広げる
現実的な承継ステップとしては、①早めに準備を始める、②施術と運営を可能な範囲で標準化・記録化する、③居抜き・カルテ・立地など「院長以外の価値」を棚卸しする、④引き継ぎ期間中の院長の協力範囲を条件として明確にする、という流れが基本になります。小規模だからこそ、早めの準備が成否を分けると言えます。


TOPへ戻る